コーヒーサーバーが壊れました。
それはただのガラスの器具で、 生活必需品といえばそうなのだけれど、 なくても数日はどうにかなるものでもあるので。
1カ月、悩みました。
買い替えるべきか。 どれを選ぶか。 本当に必要か。
雑貨屋さんに行って、実物を手に取り、重さを確かめ、ガラスの薄さを眺めました。
いいな、と思ったのだけれど。
買えませんでした。
何かが、まだ足りなかったのですよね。
ネットでたくさん検索してはカートに入れて、削除して、を繰り返す日々。
ある夜。
何気なくテレビを見ていたら画面の中で、誰かが静かにハンドドリップをしていました。
湯気が立ち上り、 ゆっくりとコーヒーが落ちていく。
「ああ、これだ」とピンときました。
私はすぐにスマホを開き、 検索して、購入!
1カ月迷ったのに、 決めるときは一瞬でした。

私は決断が遅い人間だと思っていました。
でも違う。
私は、時間が熟すのを待つ人なのだと思います。
迷っているようでいて、 じつは感覚が揃う瞬間を待っている。
条件が整うことよりも、 自分の中の景色が一致することを。
お店で手に取ったとき、 まだ私の生活の中にその姿はなかった。
でもテレビの中で、 コーヒーを淹れる姿を見たとき、 それが自分の未来に重なった。
だから、迷いが消えた。
すぐには決めない。
でも、決めたら早い。
時間をかけて、 私は自分の中の輪郭を整えている。
衝動ではなく、 恐れでもなく、 ただ「腑に落ちる」という一点まで。


