キャンプの帰り道、突然お腹が痛くなりました。
さっきまであんなに気持ちよく自然に浸っていたのに、車に乗った瞬間、現実が容赦なく押し寄せてくる。
「今じゃないでしょ……」
そう思いながら、頭の中で必死にトイレの場所を探しました。
途中、道の駅に立ち寄ることはできたけれど、期待したほど回復せず、なんとも心許ないまま車に戻ったわけです。
あったかペットボトルをたくさん買い込んで。
そんな切羽詰まった状態で走る山道。
ふと、視界の端に動くものが見えました。
鹿だ!
道路の真ん中に立ち、車内の私たちをじっと見てくる。
こちらの焦りなどお構いなしに、静かで、堂々としていて、その瞬間だけ、時間が止まったように感じました。
ブレーキを踏んで車が止まると、鹿はスッと身を翻し、何事もなかったかのように山へ戻っていった。
お腹はまだ痛い。
けれど、さっきよりも少しだけ、我慢できる感じになっていました。
あの鹿の姿が、なぜか強く心に残っています。
……というか。
あれは「大丈夫だよ」って、神様が様子を見に来たのかもしれないなー。

